
小田原のどか・山本浩貴 編
「近代日本 この国の芸術、日本美術史 を脱帝国主義化する」
月曜社 本体価格3600 円
851 ページの大著で多くの研究者・アーチストが参加したプロジェクト・本書の出版で一応の締めくくりとなるという。帝国主義時代を経過して今もってその時代の価値に呪縛された美術史を、大きな視点から解体し再構築する狙いがあるらしい。しかしこれらの論考を読破するには時間が足らない、それほど多岐にわたる問題を提示する。ある種の大規模な価値の崩壊が起きている印象を直観するのだった。(K)

足立 元 著
「アナキズム美術史 日本の前衛芸術と社会思想」
平凡社 本体価格4400 円
この500 ページ近くもあるボリュームを読みこなせる時間的ない時点で、しかし興味津々な内容が零れ落ちてくるというような感慨を持った。近代からの日本美術史の、既成概念を乗り越える野蛮なる、知的な冒険を感じた。「なぜ日本美術会は現代アートにならなかったのか」というような、挑発的なタイトルもそうだが、足立さんは実際「美術運動を読む会」に参加されて、それを読み込み、研究もされているわけである。僕らより若い世代であり、研究者はそれまでの屈折した新左翼的な視野を超克している。内田巌の再評価なんかの視点もあって、もう少し読み込んでみたい日本近代美術史再構築の本だと思う。(K)

四國光 著
「反戦平和の詩画人 四國五郎」
藤原書店 本体価格2700 円
子息の四國光さんとお会いしたことがある。丁度、四國五郎の展覧会を平和資料館で開催中、会場にいらっしゃった。シベリア抑留時に書き溜めたスケッチを、靴の底にかくして持ち帰った、という説明を受けたのが印象に残った。
日本アンデパンダン展に関わってきた自分らの世代は、四國五郎さんを前から出品作で知っていたが、戦後のシベリア抑留については初めて知った。復刻版の出版でそれを見ることもできた。
今回の伝記出版で、四國五郎さんの多面性というのか、戦争・シベリア抑留・弟の原爆による死・「辻詩」広島の活動・絵画ポスター絵本などの平和活動など、多義的な生涯の活動は、平和が危ぶまれる風潮の中、再評価の波となっていると思われる。子息である光さんの奮闘も相まって、この本への注目度も上がってきている。重版もされている。(K)

「絵画サークル諏訪-50 周年記念誌」 -濃密な地域の美術グループの歴史と 記憶-(1冊1,000 円)
子息の四國光さんとお会いしたことがある。丁度、四國五郎の展覧会を平和資料館で開催中、会場にいらっしゃった。シベリア抑留時に書き溜めたスケッチを、靴の底にかくして持ち帰った、という説明を受けたのが印象に残った。 日本アンデパンダン展に関わってきた自分らの世代は、四國五郎さんを前から出品作で知っていたが、戦後のシベリア抑留については初めて知った。復刻版の出版でそれを見ることもできた。 今回の伝記出版で、四國五郎さんの多面性というのか、戦争・シベリア抑留・弟の原爆による死・「辻詩」広島の活動・絵画ポスター絵本などの平和活動など、多義的な生涯の活動は、平和が危ぶまれる風潮の中、再評価の波となっていると思われる。子息である光さんの奮闘も相まって、この本への注目度も上がってきている。重版もされている。(K)

「野見山暁治さんを悼む」
九条美術の会 坂下雅道 阿部正義
102 歳で亡くなられた画家の野見山暁治さんとの交流を振り返って、心温まる文章を書いている。手作り感の素朴な冊子。何人からから「美術運動」取り上げてって要望があった。九条美術展、アトリエ訪問、職美展講演会、都美術館講堂での講演など、その人的な交流からの感想やリスペクトの気持ちあふれる冊子になっている。 ( 木村勝明)

北海道の画家・富田幸衛氏の遺作集
発 行:富田幸衛作品集を作る会
発 行 日:2023 年10 月15 日
発行責任者:福岡幸一
〒061-3441 北海道石狩市厚田区聚富211 番地29
TEL&fax.0133-60-3730
【富田幸衛:著作】
●微光のソノリテ――画家・伊藤仁の作品世界――
●社会史の中の美術家たち
――北海道における民主的美術運動再考――
《富田幸衛-執筆》
●画集「画家 大月源二の世界」の改題を執筆
●北海道平和美術展の「平和と美術」に執筆)
2022 年に91 歳で逝去した北海道の画家・富田幸衛氏の遺作集。翌2023年5 月17 日~ 21 日に実行委員会主導で遺作展を札幌市民ギャラリーで開催、その時の作品と追加の作品の計142 点の作品を収めた遺作集です。
大月源二氏が主宰する「北海道生活派美術集団」に師と仰ぐ伊藤仁氏の推薦で参加。「札幌勤労青年美術会」には講師。日本美術会の元会員で「日本アンデパンダン展」に出品。その後「北海道平和美術展」の立ち上げに奔走、出品しながらアドバイザーとして参加。国鉄労働者として組合活動にも励む。
作品はリアリズム志向で人物・風景・静物画と多彩です。特に風景画と静物画は大きな作品が多く確かな筆跡と観察力には感服します。スケッチをし、これはと思うと驚くほどの速さで油彩画を描き上げたと実行委員長の福岡氏は話しています。3 人の友人が追悼文を載せています。北海道の民主的美術運動の一端を感じることができるかもしれません。(文:涌泉多喜雄)
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