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「黒の空間・水谷光江展」2023.12/19 ~ 24 府中市美術館市民ギャラリー

宮本 能成(日本美術会会員)

「黒の空間・水谷光江展」2023.12/19 ~ 24 府中市美術館市民ギャラリー 大小120 点余を一堂に展覧しました。年末の押し迫った中で、 口伝えに聞いたという人が日ごと増加し、入場者は450 名を超え盛会でした
大小120 点余を一堂に展覧しました。年末の押し迫った中で、 口伝えに聞いたという人が日ごと増加し、入場者は450 名を超え盛会でした

 身近にある鉛筆、コンテ、パステル等を使いながら、東洋の水墨画に通じる独自の深く厳しい線の一本一本の表現に、山と人の生活を愛した画家の現代胸中山水に鑑賞者が魅せられたと思います。幾人かの人に-どの様な経歴の画家か?-と問われ、初めての出会いに驚いている様子でした。
 30 年以上水谷光江さんの絵を守ってきた矢内忠男さん(水谷さんの夫・矢内尚志さんの弟)の“ 高齢化した自分達には絵の今後の目途も立たず、最悪廃棄となるかと心を痛めている”との言葉に自分達自身の事とも思い重ね合わせ、微力でも、多くの皆様の力を借りて何とかしたいというのが今回展示の出発点です。矢内忠男ご夫妻のご好意と、皆さんのこの絵を残そうという想いとご協力によって成す事が出来ました。一方で今回の方法がベストの方法であるかどうかは分かりませんが、一つの先例として今後に生かされる事を念じています。

 《水谷会の記録》

●2020 年春 矢内忠男さんから額装済の120 点余りの絵を、条件なしで私たちに託すことを受け、水谷会を組織して取り組む。

●2020 年6 月 絵を受け取り、メンバー内三か所で保管する。

●2021 年3 月 第74 回日本アンデパンダン展企画展示「日本アンデパンダン展と女性たち」で代表作10 点を展示。

●2021 年6 月 第75 回職場美術展「特別展示-水谷光江コーナーで、小品を含め20 点展示。

●023 年7 月16・17 内覧会(日美センター・民美アトリエ)実施。12 月予定の「黒の空間・水谷光江展」開催に向けその資金カンパのため。寄付額に応じて各自好きな絵を展覧会後に引き取る手続きなど行う。

●2023 年12 月19 ~ 24「黒の空間・水谷光江展」(府中市美術館市民ギャラリー)開催。美術館収蔵検討中5 点を含め、行先の決まったのは全体の80 パーセントほど(発送済)。集まったカンパにより、美術館会場費など諸経費は目途が立ちました。 

 この間、岡本博さんが亡くなられました。(2023 年1 月)自宅に残された膨大な作品群が廃棄されたとの事。残された絵に高額で到底背負いきれない相続税が査定された理由によると聞きました。
 優れた美術作品を発掘し、どの様に収蔵・保存し、後世の国民財産として伝えて行くかという政策はあまりにも貧しく、一方で遺族に残され、売れているわけでもない絵に、売れたら?という仮定のもとに税収の対象にする呆れるばかりの税制は、皆の力で正してゆく必要を痛感しています。 

【水谷会 メンバー】阿部正義・伊藤八枝・小西勲夫・篠崎カツミ・冨田憲二・藤田日出男・宮本能成