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脈ーFUKUSHIMA   2017展の記録から

日本美術会会員 深谷 滉

 福島県にも地域に根ざした、民主的で平和と表現の自由を守り、作品を発表し続けている集団がいくつもあります。その中でも数十年間続いている「脈展」のあらましを紹介します。

 2017年脈展の図録の中で、事務局長の熊田喜宣氏は下記の様に記しています。 脈-FUKUSHlMA2017展は、2年前に開催した2015展記録誌に荒洋代表が記したように、その源は戦後間もなく、橋本章氏を中心として伝統主義や権威主義に反発する若い仲間たちを結集し、1953年に結成された福島青年美術会であり、それ以降の流れの中に位置付けられよう。

 この60年余りに及ぶ活動は、その名前が示すように福島県内の若手の結集による「福島青年美術会」に始まり、「新作家グループ」、「企画グループ」、「グループ・顔」、そして「共鳴展」を経て「脈展」へと続く。「グループ・顔」までの活動については、副代表の真柴毅氏がまとめられた『時代ヲ打テ!橋本章展』(福島県立美術館)に詳しいが、繰り返すことにより生じるマンネリ化を嫌い、その傾向が見られるようになるとスッパリと解散し、斬新な在り方や見る人のみならず参加者自身が心躍る企画を中心に据えたものだった。

 今回のような大作を並べ合う個展の競演ともいうべき「集団個展」方式や、企画グループによる「テーマ」展などがその例である。

 2015年展は43名の、2017展は60名の出品者でもって開催されたが、特に今回は壁画の確保のために過去には無い2階展示室も使用することとなった。一一一以下略 少年・少女の如く嬉々として進める姿からは、頼まれたから出品するのでは無く、自分達で面白い展覧会を作り上げるのだという気概が感じられてとても舷しいものであった。

 出品者の個性と魅力が競演し合う会場を訪れた多くの方々からは、次回も大いに期待するとの称賛の声が寄せられたし、荒代表には5回開催やテーマ展の構想、もあるようだが、これらに応えるのは出品者各位であるのは言うまでもない。

 最後に、橋本章氏が1977年に「凍土」に書いた文章の一部を引いておく。「現在の、友人たちとの行動では、〈集団個展〉というものを福島市でもって開催しているのがそれとなっている。その会名を「新作家美術会」と言い、なお根強いところの(当県での)権威主義な文化風土の中にあって、その〈集団個展〉は私たち年1 回の{祭典}となっている、と言える。〈君はこのお祭を楽しんだだろうか〉」