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2023 日本美術会シンポジウム

10月15日(日)平和と労働センター2F大会議室

 基調提案:薮内 好(理論部)からの提案はA4-6 枚の本文、30分のスライド上映と説明でした。日本美術会「会報NO.144」にその本文と3 名の創作体験報告者、寺川真弓・中田耕一・韮塚作次から提出していただいた資料が全文掲載されています。本誌にそれを再録するのは無理がありますので、会主催の総会を挟んだ各年開催のシンポジウムが、このコロナ・パンデミックの困難の中、ようやく再出発した様子を写真構成します。

 三人の創作体験の本質的な問題。その創作における素材の持つ問題と、作者の向き合い方の新鮮さ!興味深いその相互依存関係について、三人三様の報告は、確かに面白く聞きましたし、スライドを観ました。そういう意味では基調報告はテーマを絞り切れていなくて、「アンデパンダン展を支える地方の作家」というコーナーは、よく知った出品者の紹介なので、皆さんわかりやすかったと思います。

 ただ、「新たな戦前を前にした美術運動」という大きなテーマでの煮詰め方は、まとめ切れない本の紹介に終わっていました。理論部の「論文集2017」の紹介は、このシンポの基調提案として、どうだったか?「おわりに-自己紹介を兼ねて-」は、ますますシンポの間口を広げてしまい、分散会の全体会への報告でも、多数そういう解り辛さの意見が出ていました。

 最終のまとめ・閉会あいさつ:百瀬邦孝(常任委員長)からは、ポジティブな全体としてのまとめになっていましたが、こういう報告・分散会・全体会のような全員参加のシンポジウムは、最初の打ち合わせによる、全体のバランスの取れた進め方が欠かせない、次回の戒めとすべきだと思う。

 創作体験は個々に興味深い内容だったことも再度記しておこう。「寺川真弓とお蚕さんと織」「中田耕一と土佐和紙・土佐硯と大状況の絵」「韮崎作次と瓦職人と創作」などそれぞれ研究課題が浮かび上がりそうな気配を感じた報告でした。 (木村勝明・記)