Seiko Kajiura の Bach & jellyfish


カジウラセイコさんはインドネシアのジョクジャカルタに10年ほど居た。帰国されての個展である。9月24日~29日(銀座・ペッパーズギャラリー)彼女の独特の感性は、鋳造の工芸的な範疇には入らない。「インドネシアの朝はイスラム寺院の塔から聞こえるコーランの声、馬車の通る音、小動物の音などで始まる」そうだ。そういう生活の音が彼女の記憶と感性の中で飛躍し「バッハとクラゲ」という作品に昇華する。地下の画廊はホワイトボックスでは無く、生活の名残があるセメント壁で、何やら大きな布のその陰が浮かび上がるインスタレ-ションは、遠い記憶を呼び覚ましてくれるような空気と、骨董屋さんのような雑多な発見の面白さがある。どことなく癒し系の動物や果物などの鋳造は、そうした空気の演出のために在るような気配だ。それぞれ面白い鋳造作品は彫刻とは少し違う概念を持つオブジェなのだ。真鍮らしい薄い切り紙細工のようなオブジェがクラゲなのだろう。インドネシアの影絵劇のような影を映す布は懐かしさを演出している。インドネシアでの生活へのオマージュと言えるのだろう。会場に流れるバッハはとても作品らとマッチして、気持ちの好い癒し系の作品展ではあった。お帰りなさい!って胸の中でつぶやいた。これからどう展開していくのか楽しみな作家さんだ。(編集K)