No.140号に私が参加している「ネパール児童絵画教育プロジェクト」の紹介をさせていただいた。図画工作の授業がないネパールで2008年から始まった美術のワークショップツアーも2015年3月で8回目になる。第1回目の旅の終わりに私が「続けることに意味がある」と言って実現している事がうれしい。しかし、一方で様々な課題もでてきた。
2014年3月 7回目の訪問から
初回より「情操教育」を念頭に、図画工作の必要性を、学校の先生方に伝えようと努めてきたが、今のネパールの現状では理解してもらうのが難しい。今回コバンの学校の先生から、賞を取
れる絵・お金儲けができる絵の描き方を指導してほしいとの要望があった。帰国後その要望にどう対処すればよいか検討した。
私たちのワークショップ授業を、単なる遊びと先生たちはとらえていた。しかし私たちは、物作りを通し、自分で考え工夫することで心を豊かにしてほしいと願って活動している。今年の凧
作りもその一つであった。自由な発想で障子紙に絵を描き、竹ひごとタコ糸を使って凧を作り、それを空へ飛ばした。子どもの頃の美術教育はとても大事で、その後において、科学的・数学的
発想の基礎や空間感覚が養われる。(例えばモノの形をよく見て紙上に再現する、大きさのバランス、近くのモノは大きく見えて、遠くのモノは小さく見える、顔の大きさと身体全体の大きさ
の違いを紙上に描くなど)これは世界の教育現場でも周知の事実である。今のネパールのように暗記だけの授業からは発想は生まれない。考える力が育たない。創作をすることで、全体的な教育を高めていきたい。その私たちの思いを先生方にどう理解してもらうかが今後の課題だ。
コバン村学校の先生との話会い
私と間地さんは2014年9月に旅行でローマンタンに行き、その帰りにナウリコット村に寄った。そこでタサンヴィレッジの食堂にて約一時間話し合いの場を設けた。参加者はシャルマ校長
先生、ミスグルン先生、戒能さん、通訳はアルジュンさんで進められた。
ミスグルン先生は、今まで続けてくれたおかげで子ども達の創作力が伸び、特に7年目子ども達が成果をみせていて、コバン村の学校ではこれから毎週金曜日にアートの授業を取り入れる
つもりだとおっしゃった。しかし美術の教科書もなく授業のカリキュラムも定まっていないため、自由に絵を描かせるだけしかできない。できればコンクールに出品できるような作品を描けるように教育していきたいともおっしゃった。来年私たちに望むことは、今までのように新しい事も体験したいので続けてほしいが、もっと基本的な絵の描き方や上手に描くテクニックを指導してほしいとおっしゃった。私たちも先生方の話を聞き、現実的な希望をくみとってよりよい方向進めていくつもりだと伝えた。
今回の話し合いで、少しずつではあるがネパールでの美術教育が根付いてきていると確信できた。また続けてきた事により現地の先生方との信頼関係が築けたからこそお互いの意見を交換
し合える事ができた。この活動を継続させていくためにお互いの考えを尊重し合いながらより良い方向に進めていきたい。
京尾ひろみ きょうおひろみ
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