杉浦あかね
池袋の芸術劇場で開催されるようになって3回目、今回展は“コンフューズ”(各人自由に表現)の形を採りながら共通性が感じられる展示空間となった。「その人が生きている実感」が作品を通して観る者に語り掛けて来るようだった。
☆三部江利子さんの色鉛筆画は、犬や猫ぶどうなど身近なものに優しい眼差しを向け、色彩豊かに描き出した。☆山田亜澄さんの水彩画は、自身の分身的キャラクターに思いを託す。ちょっぴり涙ぐんで佇む姿(前作)の隣りで地面に倒れ込み助けを求める姿(今作)。ハートいっぱいの笑顔を取り戻して欲しい。キャラクターといえば☆安東伸輔さんの〝うさちゃん″。第2回展からお馴染みで、「好きで描いているんだね」と私は勝手に解釈していたのだが、作品とともに置かれた文庫本スケッチ帳の中にフキダシ付で繰り返し繰り返し出てくる〝うさちゃん″を観るうち、彼を励ます存在だと気付かされた。☆池田真一郎さんの油絵は、恨み・殺意など人間の負の感情を血しぶきや冷酷な表情の女性像を通して表現した。☆杉山まさしさんは前回まで重厚な額入り出品だったのを廃し、思い切ってキャンパス・紙地だけとし、マスキングを施す手法で画面の緊張感を創り出している。働く人・家族・独り・・・。社会(集団)の中の個を、抑えた色調のなかに描いた。☆意表をついたのは、高橋興さんの新聞紙を重ね貼りした上に地塗りし描いた大小様々の顔々々。墨一色を用い、これだけ自由に紙面を埋めたのは圧巻。☆鈴木陽規さんの『青春18きっぷ』は、三冊の各文庫本を活字文に沿って切り込みを入れ結び目を作る、という発想に驚かされる作品。様々なものを〝結ぶ″ことを通して人との関係性を問う事を制作のテーマにしているという。☆Poccuruこと渡邉みさとさんのカラフルな顔彩や色鉛筆・ちぎり絵的な表現は、詩的な空間を創り出していた。会期最終日、自身による〔大人のための読み聞かせと歌〕企画は、絵本の持つ可能性と参加型の芸術(表現方法と受け取り方法)の一例として、楽しく心温まるものだった。
合評会を通じ、世代や経験の長短を越えた交流が出来るのもこの展覧会の魅力のひとつだと思う。互いの制作に懸ける想いを語り合い、“ART CONFUSE”が各人の飛躍を目指す実験の場ともなっている事を知った。
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