熱い政治の戦いが終わり、政権交代の動向が注目されます。社会は人間がつくったものなので、人間の力で変えることができますが、自然はどうでしょうか。高速道路建設やダム建設等人間による数限りない試みは便利さと引き換えに高価な代償を払わなければならなかったたようです。最近世界を襲った旱魃、ハリケーン、つなみ、氷山の崩壊、森林火災等、数々の災害も温暖化による異常気象によるものと言われています。今や環境問題は全ての人にとって看過できないものとなってきたようです。
私自身成長期、東京の空がどんどんスモッグに覆われていくのを、悲しい思いで眺めたことを、思い出します。また中年過ぎに、ホルモン異常による病気を経験したりして、食物や環境への関心を強く持つようになりました。
これらの変化を敏感に受け止めるところから発して、それらのことを少しでも作品として表現していきたいというのが、最近の傾向です。しかし、そんな蝕まれる環境や災害ばかりではなく、「自然との対話や共生」も描きたいという気持ちも高まってきました。本来の人間の幸せの原点がそこにあるからです。
今回「自然の驚異」と「自然との対話」、一見正反対のテーマを並べましたが、根本には「自然への憧憬」があるということをご理解いただければと思います。写真にあるのは大きな作品ばかりですが、これ以外に、6号以下の小品が12点程ありました。ガラスの額に入っているため、撮影を省略しました。
今回2年ぶりの東京での個展開催で、通算12回目になります。ご多用の中、150人位の観覧者を迎えましたが、日本美術会の関係者が40人程いらっしゃって、賑わしていただきましたこと、深く感謝申し上げます。つたない作品ですが、来られなかった方もウェッブ上でご覧頂き、ご批評頂ければ幸いです。
(ひしちよこ・美術家)