スペインから出品します


 パンプローナに住んで20年        星野 敬子

こちらスペイン、ナバラ県の首都パンプローナに移りすむようになってもう二十年が過ぎようとしています。子供たちをつれて 日常会話もほとんどできないような状態ではじめた異国での生活がいつかここにギャラリーを持ち これを基盤としてまた新しい日本との美術の交流が始まろうとは当初には思いも寄らないことでした。

京都芸大を卒業したのちずっと絵を描き続けてはいたのですが、私が本当の意味で自分の絵描きとしてのまた芸術家としての自己を確認していったのは、このスペインの地によっていると思います。異国の地で 自分が持っている絵の技によって生きていくことが、そうでなければ見いだせなかった私の自己発見と確認の道程だったと、今ははっきり思うことができます。

ナバラ県はピレネー山脈によってフランス国境と接する北の県で パンプロナは日本でも良く知られている牛追いの祭りの町です。またナバラ県は 日本を訪れたサン フランシスコ ザビエルの生まれたところですので その縁でパンプローナ市は日本の山口市と姉妹都市となっています。 北には緑深いピレネーの山、南は広大に広がる砂漠のような地域と、極端に異なる二つをあわせもち。気候も厳しい冬と 灼熱の夏というこれも極端なものです。

ここはもう私の第二の故郷と言えるような愛着を感じています。頑固で硬い一見つかみにくいようなバスクの人たちが 一斉に爆発したかのように夜通しの祭りに浮かれ 普段は静かな 城下町が赤と白祭りの衣装で埋め尽くされる様子は、この極端な風土に似ているようにも思えます。

 

Pamplonaの旧市街に私のギャラリー、Orizuruはあります。平和と調和の祈りである 折り鶴をギャラリーの名前としました。 ここが 自由な作品の発表とアーティストたちや芸術を愛する人々の交流の空間になればという思いでした。自由と平和と人間尊厳への相互の尊重をこのギャラリーのモットーとして 失われることなくやっていきたいと思っています。 それぞれの芸術への思い、夢を語り合い、それを実現していくためほんの少しであってもギャラリーとして手助けできることができたら、と思っています。 そしてギャラリーを始めて驚くことは なんとたくさんの移民のアーティストたちがいるのだろう、という事でした。中南米やアフリカなどから 少しでもよりよい生活とまた芸術家としての路を求めてスペインに渡ってきた人々です。 苦しい生活の中で、本国にいる家族と離れ送金を続けながら それでも芸術 への夢と愛情を保ち続け作品を製作し続けています。

  芸術というものが 満ちたりた生活の上に成り立つ余剰の部分なのではなく、人間存在の根源にまで遡れる、生命の賛歌なのではないかということが、彼らから私はもう一度教えられているように思います。

  まだまだ初めて新しい私のギャラリーですが 芸術家たちが 気楽に集まってくる空間になってきています。絵画、彫刻などの分野だけでなく 若い詩人の人たちの新しい詩集の発表の場に使わせてほしいと頼まれることもあります。 今は展覧会とあわせてカメルーンの詩人の詩集を置いていますが、彼も故郷から難民ボートでスペインにたどり着いたというような 経歴を持ち、それでも 家族を養いながら詩を書き続けています。そのような 一人一人のアーティストの人生と芸術への愛情が 私にはとても尊いものに思われます。

去年の12月 日本からアンデパンダン展の出品要項が届きました。

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あらゆる権威から独立し、何よりも美術を創ろうとする人一人一人の創造性、個性、人間性の発揮と批判精神を大切にしています。そして出品者・鑑賞者が平等に大きな連帯と交流の輪をつくることをめざしています。
激動と変革の時代、新しい美術創造を求めて、そんなアンデパンダン展にあなたも参加してみませんか。

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この趣旨は 私が自分のギャラリーのモットーとするものと合致します。そして これを機会に 日本との芸術の交流が始められることになれば こちらのアーティストたちにまた新しい夢を与えられる機会になると思いました。

 今回は初めての出品で期間もあまりなく思うような準備もできませんでしたが、これを機会にまた是非来年からも継続して出品させていただきたいと思っていす。

 

              ORIZURU Gallery

               Keiko Hoshino 星野敬子

 

《緊急情報》

只今スペインから星野さんが組織されて29名の出品が予定されています。

今までに無い自主的な国際出品という事で、日本アンデパンダン展実行委員会でも

日本美術会国際部が窓口になって、サポーターを募って、スムーズに出品や配送が行なわれるように有志のサポート組織をつくりつつあります。

(2月9日現在17名登録)

また、会期中に日本に旅行される出品者がおられたら、

交流がスムーズに進むように

サポートしたいと考えています。尚、お隣の韓国からも出品者が増える予定です。

自分も何かできると思われる方の参加をお持ちしています

(日本美術会・国際部まで連絡お願いします)

TEL:03-5842-5665