壊憲阻止のためのさまざまな運動が全国で繰り広げられている。2005年に立ち上げられた九条美術の会もその一つだ。昨年9月22日「守ろう・生かそう憲法九条美術展」の開催に際して、「思想運動833号」に掲載された文を、同誌編集部の許可を得て、ここに転載する。開催後の事情を若干加えた。
「守ろう・生かそう憲法九条美術展」開催
美術家は作品を描いていること自体が憲法を守ることだと思いがちである。人間が作り上げた文化にはその行為を表すのに意志が必要だ。美術家ならそこで作品を通して憲法九条を守るにはどうするかが問われる。すなわち憲法九条を守ることで美術家ができることは何か?といったことになる。その問いからこの美術展開催のきっかけが出ている。昨年9月22日から27日まで埼玉県立近代美術館で「守ろう・生かそう憲法九条美術展」を開催した。176名の出展をえて内外に美術家の取り組みが顕示できたと思っている。
また、会期内に行われたアートスピーチ「創作と平和」には聴衆110名が参加した。スピーカーの発起人で美術評論家の水尾比呂志氏は「ものづくりを通して憲法九条を守る」、画家の金山明子氏は「世界の痛みと自分」、上條陽子氏は「レバノン難民キャンプで美術教育の経験」、河内成幸氏は「個々の中にある戦争と平和」について、出店久夫氏は「表現にいたる職業経験」、そして戸田康一氏からは「一人ひとりの世界との繫がり」等々について語られた。そこで言われたのは、今まで実施してきた九条美術の会の活動を発展させ作品を通して作家の意志を展覧会で示そうということであった。美術家の一つの意思表示がこの展覧会にあったし、そこに作家の作品の意志があると思う。
九条美術の会の活動
わたしが把握している範囲では、美術展などを開催している九条の会、いわゆる美術九条の会、または九条美術の会は全国に13ほどある。北海道から福島、埼玉、千葉、神奈川、上越、静岡、京都、大阪、岡山、広島、高知、山口などであるが、それぞれ独自にまた“まじめに”活動している。その他には地域の美術家・関係者がそれぞれ九条の会に参加するかたちで関わっているのは頼もしい。わたしの場合ここに至るまでは・・・・。
2005年1月に有志による準備会をもって九人の発起人(大野五郎・画家、岡部昭・彫金家、川上十郎・画家、窪島誠一郎・無言館館主、佐藤忠良・彫刻家、鳥居敏文・画家、西常雄・彫刻家、野見山暁治・画家、水尾比呂志・美術評論家)にお願いし、アピール文の作成、署名活動、資金カンパ活動など行ってきた。
2007年の王子美術ギャラリーで92名の作家による小品展もそれであったが、規模は小さかった。今回(2009年)の展示作品は大きさ100号までとして持ち寄った。出品者の地域別は東京67名、埼玉51名、その他、群馬、神奈川、愛知、千葉、大阪、茨城、長野、山口、京都、新潟、栃木、静岡、沖縄、山梨、滋賀、大分、岡山、北海道、岐阜、奈良、富山など全国からの作家によるものになった。
過去には、長野・無言館や京都・立命館大学平和ミュージアムを見学する“平和の旅”は写生会を兼ねて行い窪島誠一郎氏や安斉育郎氏の話も聞いた。三周年の集いでは滝沢具幸氏から現代学生気質の話も聴いた。2008年9月には東京・上野公園の不忍池写生会をしている。署名やカンパ活動は平和美術展や職美展の有志や全国から参加した呼びかけ人からのもので約3000名余(2009年11月時点)という貴重な積み上げを行ってきた。加えて活動資金のための絵はがきの販売などをしてきている。ひとえに憲法九条を守り生かすための行動である。そのための会議も準備会から52回を重ねた。憲法九条を守り(生かす)運動の継続は努力のいることである。
ともあれ先の総選挙では改憲をかかげる自公政権が徹底的な敗北を帰し民主党を中心とする新たな連合政権が生まれるその動きの中で政治的な課題がある。
憲法審査会始動反対、改憲手続法の抜本的な再検討、給油新法の廃止法とアフガンへの非軍事的な人道文民支援などである。
このような中で明文改憲に反対し解釈改憲を阻止し憲法を生かす運動づくりと美術展を開催する意志を明らかに示していかなければならない。
(じゅうたきうたき・九条美術の会事務局・美術家)
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