比企丘陵の里山でアートと出会う


~国際野外の表現展2009比企~       古沢ゆりあ

 「人間と自然が共存する環境について考える」というテーマで2002年より毎年開かれている「国際野外の表現展」。2009年は9月15日(火)から1018日(日)まで、埼玉県比企郡の東京電機大学鳩山キャンパス、東松山市千年谷公園などをおもな会場として開催された。参加アーティストは、計4カ国の27人・グループだった。

 池袋から東武東上線で約50分の高坂駅より更にバスで行くと、なだらかな丘の中腹に東松山千年谷公園が広がり、丘を登りきると東京電機大学鳩山キャンパスに到着する。ダイダラボッチの伝説が残る、丘陵に小さな沼が点在するこの地域が野外の表現の舞台である。

 滞在制作を行う作家たちは、この環境の中でいかに作品を展開するかに工夫をこらしている。たとえば、竹や木材を用いて幾何学的な構造物を構築する東京電機大学岩城研究室の作品は、「理系のアート」とでも形容したくなる理知的な形態を実現し、有機的なまわりの風景との対比を生んでいる。また、金属彫刻の児玉士洋が文明と自然の拮抗を表現するのに対して、エバ・ホグベリーはもろい落ち葉で作られたドレスによって人間と自然の調和を語りかけている。

 地域密着型の現代美術展が各地でさかんに開催され、「ビエンナーレ化現象」の功罪が言われる昨今であるが、この「国際野外の表現展」は声高に自己主張するのではなく、比企の風景とともに、訪れる人を自然体で迎え入れてくれるだろう。

 

国際野外の表現展 http://www.ioe-hiki.com/index.html