「日本美術会はなぜ今、あの大会場でアンデパンダン展を開催するのだろうか?」    


いなお けんじ

 

ちょうど1年前に冊子「美術運動」に投稿して以来になる。その時のものは一寸格好つけた内容で、現実の日本アンデパンダン展からかけ離れたものだったように思う。自分の未熟さはさておいて、このような大展覧会を今という時代が本当に求めているのだろうか。

戦後という一種の勢いの中にあったことは日本美術会も同じだと思う。65年が経つ今、日本アンデパンダン展は率直に言って創立時の作家や考え方に共鳴した第二、第三世代の作り手とその周辺の人の「顔合わせ交流展」となっていないだろうか。それを日本美術会が目的とするのであれば、それなりの意味はあるだろうが、どうか。美術と言われるものの範疇やその社会的意義等の見直しと変化の中、次の世代の人たちがボランティア的労力と経費を費やしてこのような大展覧会を何年も続けたいだろうか。続けられるだろうか。掲げるテーマや企画に留まらず、会場・会期も含め開催する必然性は常に時代と向き合っているだろうか。目的が一層肥大化して曖昧で解かり難い八方美人化した「催し」になっていないか。

アンデパンダンという考え方は現に魅力的であるとしても、具体的な展覧会の内容や在り方は時代と共に常に見直しが必要だろう。作家同士の研鑽に重点を置く内輪的展覧会であるならば、別な会場・方法もあるだろう。理念もその具現化も時代とのすり合わせという見直しが最も大切なのだと思う。そしてそれを行うエネルギーも。文化分野の集団であれば尚のこと。人間の創ってきた価値観に絶対などないのだろうから。

 

ここまで書いてきて3日が経った。後ろ向きな訳ではない。次の世代がとても気になるし、繋げたい。なんとかしたい。そこで具体的な提案だが、所謂青年層を対象にした小規模(30人未満)でアンデパンダン形式(精神)の日本美術会主催の企画展を何箇所かでできないだろうか。内容や方法はいろいろと考えられるだろう。次世代の人たちは我々のころとは大きく違った、生きにくい状況の中にいるように思う。しかも情報だけは桁違いに溢れている。批判するだけではなく、今は先人の方から次世代の中へ積極的に入っていく時ではないか。ことあるごとに交流を心掛けていると新しい展開も見えてこないだろうか。コンパクトな具体案をスピードはやく!

                     2010・1・20